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肝虫の退屈日誌 - 理想とは

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理想とは



ユートピアズ/うめざわしゅん(小学館)

おとついぐらいから無性にマンガが読みたくて
プックオフでもコンビニでも
なかなかピンと来るのがなくて
昨日ツタヤで発見してジャケ買い。
そしたら内容もビンゴで大満足。

この本は10個の短編集なのですが
まず面白いのは話の設定。
「ナオミ女王様に仕えた日々」では
ペットを女王様に置き換えて
まるでペット飼うような感覚で、
ある日家に女王様がやってくる。
「ブタ野郎!」と罵られたり
ムチで叩かれたりといった虐待を通して
主人公の少年と女王様の心の交流を描いている。
そんな中で「ノラ女王注意」なんて看板も出て来たりと
設定の細かさにとても笑えてしまう。

その他「どつきどつかれて生きるのさ」でも
似たようなテイストで、
ボケとツッコミを男女の関係のように描いている。
街にはキャバクラならぬ「ボケクラ」というのがあり、
そこに主人公はツッコミに通うのである。
これも話がよくできていてとても可笑しい。


でも個人的に一番面白かったのは
「チューブ」や「つながった世界」である。
これも上記2作品同様の面白い設定であるが
特筆すべきは異常なまでに「理想」が追求されていること。
そして、実際に起こりえそうだということ。

例えば「チューブ」ではその「理想」は
「健康」や「安全」という形で描かれている。
主人公は事故により眠り続け、12年後に奇跡的に意識を取り戻す。
そこでの世界は異常なまでに「健康」や「安全」を
重視する世界であった。
今、タバコの箱にある「喫煙はあなたの体を〜」なんて注意書き。
あれが街のいたる所に貼ってある。
タクシーには「事故で死ぬ危険性が〜」
ビルには「大地震で倒壊する恐れが〜」
家のドアにすら「はさまれて子供やペットが〜」
風邪をうつせば裁判沙汰、ケガをすれば内申書に響く、
今考えると馬鹿馬鹿しいかもしれないが
個人的にはありえるんじゃないかと思う。

現代に蔓延する歪んだ「理想」思考。
なるべく傷つかないように。
なるべく嫌な思いをしないように。
そう考える事自体を間違いだなんて思わないが
傷ついたり、嫌な思いをすること自体を悪だとすることは
間違いなんじゃないかと思う。
悲しいことがあるからこそ、楽しいことも存在するわけなんだから。
そしてそういう風潮というのは現代に存在している。
うまく説明できないけど
ある「理想」がぼんやりと社会にあって、
それに反した行為や発言(犯罪は除く)を公の場ですると
鬼の首を取ったかのように批判されてしまう。
そんなわけで先生は言葉を慎重に選び、
ニュースキャスターはその理想に沿った発言をする。
このヘンテコな「理想」を突き詰めるとこんな社会に
なってしまうんじゃないかと思うのである。

このマンガが面白いと思ったのは
作者がおそらく社会に対してすごく問題意識を持っていて、
それをものすごく鮮烈かつクリアな切り口で表現しているからだと思う。

あと話がちょっとそれるけど
非日常の描き方が安部公房っぽいとふと思った。

そんなわけで長くて支離滅裂になってしまったけど
とてもオススメです、このマンガ。
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